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10月24日 まん中に持っているもの

ワタの布づくり菱川師宣.jpg

  • 半年間、ずっと向き合ってきた「工房からの風」への出展が終わりました。
  • 終わってからじわじわと、強く思う事柄も多いです。
  • 「出展者が作り手として、もっともまん中に持っているもの。それをぜひ、工房からの風でそよがせてください。」
  • 最初の全体ミーティングで配られた紙にありました。
  • あれもこれもと取り入れようとせず、俳句や写真のように何かにフォーカスして焦点を絞ることでかえって際立つということ。自分の心を透明にして問いかけてみること。何が好きで、何に重きを置いて、なぜやっているのかということ。個別のミーティングを経て、整理できた(実際は自分でも気づかなかったことを引き出していただいた感じですが)ことで、階段を一段上れたような、そして今まで見えなかった景色がほんの少し見えたような気がしています。
  • 今更ながら自分のまん中のことを綴っておきたいと思います。
  • 綿という素材のこと。シルクのような光沢や華やかさもないし、ウールほどの暖かさもない綿。一般的には安価で扱いやすい便利な素材。主役になるには個性が薄い地味な素材。綿のそんなところに魅かれます。
  • 気取らず地味に味わいのある存在が格好良く魅力的に思えます。自分にはしっくりくる、という感じです。
  • 木綿布といっても色々あって、ジーンズも、Tシャツも、病院で使うガーゼも、タオルも、帆布も、、とにかく身近に溢れています。でも、手紡ぎ手織りの木綿布は、それらとは別の時間軸にある布です。
  • 言葉を紡ぐ、夢を紡ぐ、、。「紡ぐ」は、丁寧に少しずつ少しずつ純化させ形にしていくようなことでしょう。「紡ぐ」ことで、今を取り巻く日常の時間とは別の、もう一つの時間の扉を開くことができます。
  • 植物である棉が実をつけ、自らの種を守るためのふわふわの繊維を作り出す、棉のサイクル。繊維を手で糸にしていくことで築かれていく綿との濃密な時間。それらを含み持つ布。
  • ワタについて、環境面や、生物学的、科学的な観点、歴史的、民俗学的に語れるような見識は私にはありません。ただひとりの作り手として、今の生活に彩りを添えられるようなものをつくるために、ワタと向き合っているのです。
  • どんな布をつくるのか。綿本来の魅力を生かした飾り気のない質朴な木綿布は、今の時代ではかえって個性的で力強いものに感じます。ただ私は、素朴な糸の風合いを生かしながら、草木染めの色や織りの組織を用いて布をつくっています。機械紡績の整った色鮮やかな糸ではなく、揺らぎのある素朴な糸にふさわしい織りを考えるのは、難しくもあり楽しくもあります。シンプルな組織の組み合わせや配色で、様々な布の表情が現れた時に感じる喜びや達成感は、初めて織りを学び始めた頃の新鮮な気持ちと変わらないです。
  • 技術や感覚はどんどん磨いていきたいけれど、ただ細く紡いで複雑な組織で織ればいいのではありません(皮肉なことに、そういう技術を突き詰めるほど、手仕事の味わいが薄れ機械織りの布に近づいてしまうのです)。逆にナチュラル志向に甘んじてはいけないと思っています。相対的に、ではなく、それ自体が自立して佳い手仕事の布、使い手に寄り添った美しいものをつくりたいと思っています。
  • 出展が終わったからといって、これで終わりではありません。佳きことが佳きことに繋がっていくように。まん中をしっかり持って歩んでいこうと思います。

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