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9月11日 風景と自分
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  • 今年も残すところあと4か月。草木も虫も鳥の声も、移ろう季節を教えてくれます。
  • 今の時季、夜中に湯船に浸かることは、いみじうあはれにをかしけれ、です(枕草子風に!)。車も通らない、しんとして吸い込まれそうな静けさの中、そこが自分の舞台だといわんばかりに鳴く秋の虫の声を、お湯に入りながらぼんやり聞く。自分のまわりの日常の時間が止まってしまったかのような、冴え冴えしたような、不思議な感覚になります。
  • 今年の私のテーマは「自分ごと」でした。今年の3分の2以上が過ぎてどうかというと、、意識はしているものの実践となるとなかなか難しいものです。
  • 毎日、毎日、ネットのニュースでは日本に住んでいる国民すべてに関わることやら、一個人の、でもその人にとっては人生を左右するような大きな事なんだろうと想像できるような事やら、ゴシップ的なニュースやら、並列してどれも同じように伝えられています。
  • 何が大切なことなのか(そもそも「大切」の価値観だってぼんやりしていますけれど)、それをどう捉えるかは捉える人自身に関わる訳で、、自分は自分をしっかり持ちたいと思うのは年初も今も同じです。
  • 自分自身って、持って生まれたものや、育った環境や経験などが関係してくると思いますが、それがどんなものであろうと、どんな人も自分に自信を持ったり自分を信じたりできれば、心の迷いも動揺もなく過ごせるのでしょう。迷わないことが良いとはいえないにしても。
  • 「たくさん読書をする」のも今年のテーマのひとつでしたが、とりあえず月6冊ペースくらいでは読んでいます。古典的な日本文学から、近頃の人気作家のものやら、海外のもの、対談集などなど、気が向いたままに手に取っています。買ったまま埃をかぶっていた数冊も読むことができ、すっきりした気持ちです。
  • 最近はたまたま、京都の染織関係の本を続けて読み、どれにも共通して京都という街の深さを感じました。この街に生まれ育った人が根っこに持つもの、気品、気概のようなもの、繊細さ、歴史や風土が育てたもの。その深層は、横浜で生まれ育った私には知りえないものです。そういった類のことは中身は違えど、どの土地にもあるのでしょう。広くみれば、世界の中の日本ということでもあるかもしれません。
  • 日々の営み、衣食住、なりわい、にしても、自分は己に即した生き方ができているのか。自分自身と分断されたところで生きていないか。人の目や、情報に一喜一憂して、本来の自分の深いところ、培ってきたものと離れた状態になっていはしまいか。
  • 夜中に湯船に浸かりながら、ぼーっと考えています。
  • 「自分たちの暮らしのなかで、経験のもち方、清濁の感覚、そういった一々に、自分が横切り、また突っ切ってきた風景が係わっている。そのように日々の風景を生きて、一人の『わたし』の経験を心に刻む」と、詩人の長田弘さんが書いています。その「風景」とは、「景勝・絶景といった特別な風景でなく」、「わたしたちの日常の風景」のことです。
  • 日常の風景。幼少時の風景すら今だに鮮明に浮かんできます。なんの意味付けもせず余計な価値観など無視して、日々ただ繰り返し目にしてきた風景。
  • 小1から電車通学でしたから、思い出すのは駅の風景。切符切りの改札口の足元に散らばる、紙吹雪のような紙屑。ホームにあちこち落ちている、踏みつけられた煙草の吸殻。どれだけ人に接触せずに歩けるか試していた、大勢の人が無表情で行き交うコンコース。
  • 地下街の片隅で新聞紙にくるまって横たわるホームレスのおじさん。触れると手が真っ黒になってしまうような、排気ガスまみれのガードレール。
  • もちろんそれ以外の風景も思い浮かぶけれど、そんな雑踏のごちゃごちゃをたくさん思い出してしまう。
  • それはちっともきれいな風景ではないけれど、確実に私に刻まれた風景であり、人が何と言おうと、私にとって笑っちゃうくらい愛しいと思える風景なのです。それが今の自分にどう係わっているかはわからないけれど、これまでも、これからも、自分の「風景」を見失わず、見逃さず、大切に刻んでいきたい。
  • そして、、そうやって刻まれた「風景」の異なる人たちが、お互いに認め合って、尊重し合って暮らしていくことができたら、なんて思う。
  • ちょうど今、これを綴りながら、bohemianvoodooのDefence Colonyという曲が流れていて、それが妙に今の気分に寄り添っていて、、やけにセンチメンタルに、ノスタルジックになってしまっております。ひゃっ。

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