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11月8日 糸

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  • 人間が生きていく上で大切な衣食住の「衣」。かつて獣の皮などを纏い身を守っていた古の人たちは、やがて植物の繊維や樹皮で糸を作り、編んだり織ったりするようになりました。
  • 日本人が本格的に木綿を着用するようになったのは16世紀頃だそうで、比較的最近のことですが、アンデスの染織の本などを眺めていると紀元前数千年の木綿の布がたくさん出てきます。その製織技術を含めとても信じられないのですが、それでも、いったいどんな気持ちで糸を紡いでいたのだろうとぼんやり想像することはあります。
  • 江戸時代の糸紡ぎの絵、はたまたインドのガンジーの写真には、今、私が使っているような糸車が出てきます。なぜ糸を紡ぐのかはそれぞれ違っていても、このシンプルな行為を時代や場所を超えて同じように行っているということが不思議でなりません。糸車がブーンブーンと回る音や、綿から糸が出てくる時に左手に微かに伝わる振動を、今の私と同じように感じていたのでしょうか。
  • 「紡」という漢字は「糸」+「方」で成り立っていて、「方」には合わせるとか並べるといった意味があるそうです。「紡ぐ」には、繊維を撚り合せて糸を作ることの他に、「言葉を紡ぐ」のように、想いを研ぎ澄ませ純化させて、少しずつ引き出したり作り上げたりする意味もあります。そして、糸偏の漢字はやはり糸にまつわるものが多いですが、「紡」以外に「綴」「編」「練」など言葉や文章に関わるものがあるのは面白いと思います。
  • テキスタイル(織物)とテキスト(文章)は、もともとは同じラテン語の「織る」が語源なのだそうです。映画「ドストエフスキーと愛に生きる」はドストエフスキーの翻訳家である84歳の女性のドキュメンタリー。文学も言葉の織物だと彼女は言います。彼女は、言葉を置き換えていくだけでなく、音声や間に至るまで宝物を探すように原文を徹底的に理解し、的確な言葉を導きだし、文章を再び組み上げていくのです。
  • 心を研ぎ澄ませて言葉を選ぶように糸を紡ぎ、文章を構築するように布を織っていく。会話や話し言葉ではなく、じっくり推敲して練り上げられ綴られた何編かの玲瓏な文章、、、のような布。もしかしたらそれは布づくりに限ることではなくて、日々の営みそのものにも重ね合わせることができるのかもしれません。
  • 運命の赤い糸なんて表現があったり、織物のたて糸とよこ糸を人と人に例えたり、象徴的に使われることもある「糸」。「絆」「縁」「結」も糸偏の漢字です。そんなことを胸に刻みながら糸を紡ぎ糸と触れ合う日々を、幸せ、仕合わせと思います。

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